産後の栄養と健康管理
2018.03.30

産後は病気にかかりやすいって本当?

出産後は産後うつや発熱、乳腺炎などが起きると聞いたことがある方は多いでしょう。どのような病気がどれくらいの確率で起こるのか、治療方法や産後に起こりうる病気について正しく見通しを立て、安心して出産を迎えられるようにしましょう。

産後に起こる可能性がある病気について、症状や原因、予防や対策などを詳しくご紹介します。どういった状態が見られ、どうすればよいのか、ひととおり把握しておきましょう。

産後は病気にかかりやすい?

妊娠~出産ではホルモンバランスの変化が起き、子宮の中で赤ちゃんが成長するなど、身体が通常とは異なっており、妊婦は多くの体力を消耗します。その影響で一時的に体調を崩すことがあります。多かれ少なかれ、どんな妊婦も出産によって身体の変化が起きますが、食生活や環境などは一人ひとり異なるため、すべての妊婦に同じような症状や病気が起きるわけではありません。

産後うつ

産後うつとは、分娩後に気分の落ち込みやイライラ、眠れないなどの抑うつ症状が2週間を超えて持続し、日常生活動作の妨げとなる状態です。悲しい、暗いなどの感情や気分に加えて、下記のような症状が見られます。

  • 罪悪感
  • 感情をコントロールできずに泣いてしまう
  • 不眠症または仮眠
  • 子供に対して関心が持てない
  • 子供を傷つけるかもしれない恐怖心

など

このような症状は、5~10%の産婦に現れるようです[1]。詳しい原因はわかっていませんが、母親になったことで感じる立場の変化や、育児による経済的負担の増加、出産後のホルモンバランスなどの身体の変化が関係していると考えられています。

予防・改善方法としては、まずは身近な家族と話をしたり、サポートしてもらったりなどして、自分の心身の負担を軽減することが大切です。症状が改善しないようであれば、一度心療内科や精神科を受診してみるのもよいでしょう。また、各都道府県および政令指定都市にある「こころの健康センター=精神保健福祉センター」では、無料の電話相談も行われています。心療内科などの病院には抵抗があるのであれば、かかりつけ医に相談することも一助となります。

産後うつは、マタニティブルー(産後7〜10日以内に始まり、産後2週間におさまる一過性の抑うつ状態)から移行する場合もあります。産後一か月以内は発症しやすい期間ですので、もし不安を感じているなら、一人で抱え込まないようにしましょう。

産褥熱

出産後24時間~10日までの間に、38℃を越える発熱が2日以上続くことを言います。主症状は発熱の他に、下腹部痛、子宮の圧痛、嘔吐や便秘、腹部膨満感(腸内にガスが溜まり腹部が膨れたように感じる状態)などが見られます。また、出産後は血の混じった分泌物である悪露(おろ)が出ますが、この悪露の異常なども挙げられます。

産褥熱の原因で一番多いとされているのが、悪露が体内に長く残った結果、子宮腔内で細菌が繁殖して起こる「産褥子宮内膜炎」です。この他に帝王切開の手術でできた傷や、長時間の分娩でできた傷などに細菌が感染して起こる「創部感染」もあげられます。

治療としては、検査で子宮内に悪露などが残っていれば、洗浄したり分泌物排泄を促したりします。さらに子宮収縮薬、抗生物質の投与等をおこないます。創部感染でも、細菌感染に対して抗生物質を投与します。効果が見られない場合は、切開して膿を排出させることもあります。分娩後に熱が出るようであれば、かかりつけ医に連絡してください。

乳腺炎

分娩後は乳汁の分泌量が急に増えますが、その変化に乳管が対応できないと乳汁の流れが滞ってしまいます。この状態を「うっ滞性乳腺炎」と呼びます。そこに、細菌感染が起きると「化膿性乳腺炎」となります。

うっ滞性乳腺炎の場合は、乳管がつまった部分が腫れたり、赤くなって痛みが出たりする他、熱を感じることもあります。乳汁がつまって起きているので、授乳をしたり乳房をマッサージしたりして解消します。

細菌感染が起きている化膿性乳腺炎では、うっ滞性乳腺炎の症状に加えて、高熱が出ることもあるようです。膿のかたまり(膿瘍)ができていなければ抗生物質の投与とマッサージなどで治療しますが、膿瘍がある場合は皮膚切開による治療を行います。分娩後に胸の痛みが出たら、早めにかかりつけ医に相談してみてください。

子宮復古不全

妊娠中に大きくなった子宮は、分娩後に縮小を始め、分娩一か月後には非妊娠時とほぼ同じ大きさになります。このような通常の子宮収縮が認められない場合、子宮復古不全と呼ばれます。

主症状としては、分娩後の出血が止まらず、悪露の増加が見られます。また、悪露は細菌の住みやすい環境であるため、細菌感染が起きて子宮内膜炎などの子宮内感染症を併発しやすくなります。

子宮復古不全は、子宮収縮を妨げる原因がある「器質性」と、明確な原因がない「機能性」の二種類に分類されます。器質性子宮復古不全は、残った胎盤や卵膜のかけらや、分娩後に動かなさ過ぎたことによる悪露の滞留、子宮筋腫や子宮内感染などが原因となります。機能性子宮復古不全は、双子以上の妊娠(多胎妊娠)や羊水過多症により子宮筋が伸びすぎてしまうことや、授乳をしないことなどが原因となります。

器質的子宮復古不全に対しての治療は、可能であるならば原因を取り除くことが大切です。あわせて、過度な休養をしている場合は少し体を動かす、母乳授乳促進や、排便・排尿の促進、子宮底マッサージ、子宮収縮薬の使用などを行います。出産後、悪露がない人や、逆にレバーのような血の塊が出た場合はかかりつけ医に連絡しましょう。

産褥血栓症

分娩後の6〜8時間は血栓症(血栓性静脈炎)のリスクが高くなります。血栓性静脈炎とは、静脈内に血栓(血液のかたまり)ができ、その部分の静脈と周りの皮膚が炎症を起こす病気です。この血液のかたまりがはがれて血流に乗り、肺の動脈を塞いでしまうと呼吸困難などを引き起こしてしまいます(肺塞栓症)。

主な症状は、脚のむくみや、腫れ、赤み、熱感、痛みなどです。肺塞栓症になってしまうと、突然胸の痛みが出て呼吸困難に陥りますが、軽い胸の痛みや咳から失神してしまうこともあり、症状は多彩なようです。片方のふくらはぎがむくんでいたり痛みを感じたりした時には、早めにかかりつけ医に相談しましょう。

予防法としては、弾性ストッキングを着用したり包帯を巻いたりして、脚がむくまないようにできます。また、血栓症の要因の一つに、安静にしすぎることがあります。出産後は痛みや疲労でベッドに横たわりがちですが、主治医から許可が出ればベッドから降りて少し歩いてみたり、マッサージをしたりしてみてください。

参考文献

  1. [1]北村俊則. "産褥うつ病のケア" 日本産科婦人科学会. http://www.jsog.or.jp/PDF/61/6109-403.pdf (参照 2018-03-06)

今すぐ読みたい

「産後の栄養と健康管理」の関連情報

注目情報