妊婦の栄養と健康管理
2018.03.30

妊婦に乳酸菌飲料やサプリは効果的?とりすぎは危険?

妊娠中は便秘になりやすいものですが、乳酸菌飲料やサプリメントの摂取は効果的なのでしょうか?また便秘の予防や改善以外の効果や、摂取の基準などはあるのでしょうか?妊娠中の乳酸菌摂取について解説していきます。

妊娠中に乳酸菌をとることにより、便秘の予防や妊娠糖尿病の予防といった、母体によい影響を与えることがわかっています。その一方で気になるのは「どうとるのがよいのか」ということです。注意点などもあわせて見ていきましょう。

腸内細菌とプロバイオティクス

ヒトの腸には100種類以上、約100兆個にもおよぶ多種多様な腸内細菌がおり、種類ごとにまとまって生息しています。その様子がまるで花畑のように見えることから"腸内フローラ(腸内細菌叢)"と呼ばれています。「プロバイオティクス」とは、腸内フローラのバランスを改善し、身体によい作用をもたらす生きた微生物のことで、その代表的なものに乳酸菌やビフィズス菌があります。

妊娠中は乳酸菌をとるべき?期待できる効果とは

妊娠中、妊婦の身体にはさまざまな変化がおこりますが、便秘による不快症状はとても深刻なものです。乳酸菌をとることで便秘を予防したり、便秘の症状を改善したりするだけでなく、免疫メカニズムをスムーズにする効果、妊娠糖尿病の予防、アレルギーを低減させる作用などが期待できるといわれています。

便秘の予防・改善効果

妊娠するとプロゲステロン(黄体ホルモン)が増加します。プロゲステロンは、消化官の筋(平滑筋)の収縮を抑制するはたらきがあり、食道下部の収縮がおさえられ嘔吐しやすくなります[1]。これがつわりと呼ばれる症状の一つ。つわりの影響で十分に食事ができず、水分が失われて脱水しやすくなっていることに加え、子宮が大きくなったことで腸の運動が抑制されてしまいます。便からの水分吸収も強く行われるため、便秘となりやすいといえます。

便秘の治療というと一般的に、食物繊維の多い食事をとる、朝冷たい水や牛乳を飲む、適度な運動をする、などがあげられます。しかし2011年には、便秘傾向のある妊婦18名が、乳酸菌サプリメントを飲むことで不快症状が改善したという学会発表がなされています[2]。

免疫メカニズムをスムーズにする効果

乳酸菌がもつ効果の一つに整腸作用があります。乳酸菌は糖を分解して乳酸をつくり、腸内の環境をよりよく整えます。腸の中に生息してよい働きをする有用菌を増やし、一方では有害な物質をつくる腐敗菌の働きを弱め、減らすことがわかっています。また乳酸菌は消化管の粘膜免疫を高めること、乳酸菌を構成する物質には、免疫力を高め、血清コレステロールを低下させる効果も報告されています[3]。

妊娠糖尿病の予防効果

母体の栄養環境は、母親と子供の両方に大きな影響を与えます。妊娠糖尿病になった母親は、出産後は糖尿病に移行する可能性も高いため[4]、厳重なフォローアップが必要です。

栄養指導とあわせ、妊娠中の母親と離乳期の子供に、ビフィズス菌+乳酸桿菌(にゅうさんかんきん:乳酸菌の一種)のサプリメントを投与することで、妊娠糖尿病や糖尿病のリスクがおよそ3分の1に下がったという研究報告[5]があります。

アレルギー疾患発症の抑制効果

アトピーは子供によくみられる病気です。妊娠中に特定の乳酸菌をとった母親から生まれた子供は、とらなかった母親から生まれた子供に比べると、アトピーになる率が約半数になっています。またアトピー体質の母親が、妊娠中に腸内環境を整えることにより、子供は母親のアトピー体質を受け継がない可能性が高くなるという研究結果[6]も報告されています。このことから、子供の腸内細菌をコントロールすることによって、アトピーをはじめとしたアレルギー疾患の発症予防が行える可能性があると考えられています。

量は?摂取方法は?妊娠中の乳酸菌のとり方について

妊娠中は食べるもの、飲むものに気をつかいますよね。乳酸菌をとるときに注意すべきことはあるのでしょうか。

妊婦は乳酸菌をとりすぎると危険?

乳酸菌は腸内でせいぜい1週間ほどしか生きられません。腸内で増殖・死滅をくり返し、最後には体外に排出されます。つわりがひどいときは、食事での摂取が難しい場合もあると思います。そのようなときにはサプリメントを上手に利用しましょう。乳酸菌は過剰に摂取しても体外へ排出されるだけなので、危険性は特になく、副作用もないため摂取基準は設けられていません。サプリメントを使うことに不安のある方は、担当医と相談し、不安を解消したうえで使用されるといいでしょう。

効果的な摂取方法は?

まずは食事での摂取が基本です。日々の食事で乳酸菌を含む食品を意識的にとり入れていきましょう。昔から食べられてきた発酵食品には、乳酸菌が活用されたものが多くあります。チーズやヨーグルトといった乳製品の他に、キムチや味噌、醤油などがあります。チーズやヨーグルトは、日本人に不足しがちなカルシウム源としても貴重ですが、カロリーが比較的高いため、食べ過ぎないようにしましょう。またキムチや味噌、醤油などは、塩分のとり過ぎに注意が必要です。便秘をはじめとする不快症状軽減のために、食事以外でも乳酸菌をより積極的にとりたいとき(カロリーオーバーを気にするときや減塩を心がけたいときなど)には、サプリメントを使うのも一つの方法です。

まとめ

乳酸菌は、妊娠中の便秘の予防や改善に効果があるだけでなく、健康維持や、生まれてくる子供の健康にも影響を与える可能性が高いことがわかりました。妊娠中の食事には乳酸菌を積極的にとり入れるだけでなく、サプリメントで補うこともできます。腸内環境を整えて、母子ともに元気なマタニティライフを送ってくださいね。

参考文献

  1. [1]新潟市医師会. "妊娠中の便秘について" 新潟市医師会ウェブサイト. _http://www.niigatashi-ishikai.or.jp/citizen/gynecology/gynecology-memo/2001070625.html_(参照2018-02-15)
  2. [2]佐藤香代ほか. 妊婦における乳酸菌生成エキス飲用の効果, 母性衛生 2011;52(3):135(参照2018-03-22)
  3. [3]厚生労働省. "腸内細菌と健康" e-ヘルスネット. https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html(参照2018-02-15)
  4. [4]日本糖尿病・妊娠学会. "産後の注意点" 糖尿病と妊娠に関するQ&A. _http://www.dm-net.co.jp/jsdp/qa/e/q02/_(参照2018-02-21)
  5. [5]Luoto R, et al. Impact of maternal probiotic-supplemented dietary counselling on pregnancy outcome and prenatal and postnatal growth: a double-blind, placebo-controlled study, Br J Nutr 2010; 103(12): 1792-1799(参照2018-02-25)
  6. [6]Kalliomäki M, et al. Probiotics in primary prevention of atopic disease: a randomised placebo-controlled trial, Lancet. 2001; 357(9262): 1076-1079

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