免疫
2017.11.01

プラズマ乳酸菌の効果と他の乳酸菌との比較

感染防御力を高めるためには、乳酸菌の入った食品を摂ることが有効な方法の一つと考えられています。なかでも「プラズマ乳酸菌」は、かぜ症候群(風邪、感冒)やインフルエンザなどのウイルス感染症を防ぐ力を高めるという点で、他の乳酸菌より優れています。ここでは、プラズマ乳酸菌の研究成果をもとに、その優位性をご紹介します。

私たちの健康を守る大きな要素に「免疫」があります。免疫の機能はいろいろありますが、細菌やウイルスなどの病原体から身体を防御することもその一つです。その中でもプラズマ乳酸菌の入った食品を摂取することによる効果についてご説明します。

プラズマ乳酸菌とは

人間に備わった免疫システムは、細菌やウイルスなどの病原体、いわば外敵に対しては、まるで軍隊のように、多くの種類の細胞がそれぞれの能力を発揮して協力し合いながら立ち向かいます。この免疫システムを担う細胞の一つに、ウイルスに対する防御を統括する司令官である「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」があります。

プラズマ乳酸菌は、このpDCを活性化する乳酸菌として2012年に発表されました。正式な学名は「Lactococcus lactis JCM 5805」といいますが、一般的な名称として「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)を活性化することができる乳酸菌」という意味を込めて「プラズマ乳酸菌」と名付けられました。

食品に含まれるプラズマ乳酸菌が小腸にたどりつくと、pDCに食べられます。そうするとpDCは活性化され、ウイルスに対する攻撃を指示する物質(サイトカイン;IFN-α、IFN-β、IFN-λ)を出します。これらのサイトカインは体細胞に対して強力な抗ウイルス反応を直接誘導します。そればかりでなく、この指令を受けて、他の免疫細胞(ナチュラルキラー細胞、キラーT細胞、B細胞など)がウイルスへの攻撃を開始するのです。

このように、プラズマ乳酸菌はウイルス防御司令官のpDCを通じて、総合的な身体のウイルス防御能力を高めると考えられています。

プラズマ乳酸菌に期待される効果

それでは、プラズマ乳酸菌を摂取することによって、どの程度のウイルス防御が見込めるのでしょうか。研究結果により、プラズマ乳酸菌がもたらすと期待されている効果は下記のようなものが推定されています。

  • インフルエンザの予防
  • かぜ症候群・インフルエンザの症状の緩和
  • ロタウイルス感染症の症状の緩和

それぞれについて、代表的な研究結果をご紹介します。

インフルエンザの予防

プラズマ乳酸菌は、pDCの活性化を通じてウイルス防御能力を高めることにより、インフルエンザの発症を予防する効果が期待されます。

岩手県の自治体の協力を得て、プラズマ乳酸菌の入ったヨーグルトを小中学校の給食で配布し(週3回;月水金)、インフルエンザの予防につながるかどうかを検証しました。雫石(しずくいし)町の小中学生にプラズマ乳酸菌ヨーグルトを飲んでいただき、飲んでいないA市/町の小中学生と比較する研究です[1]。

インフルエンザ流行のピーク時の罹患率(インフルエンザにかかった人数の割合)を比較すると、雫石町は5.18%、A市/町は7.29%であり、雫石町の方が1/3ほど少ないという結果になりました。また、観察期間中の全体の罹患率については、雫石町は19.84%、A市/町は27.36%で、雫石町の方が低い割合でした。統計学的な解析の結果、この割合は偶然起こったもの(誤差)ではなく、明らかな違いがあると認められました。

このことから、小中学生においてプラズマ乳酸菌ヨーグルトを週3回食べることが、インフルエンザの予防になり得ることが示されました。

かぜ症候群・インフルエンザの症状の緩和

プラズマ乳酸菌はインフルエンザの予防だけではなく、かぜ症候群やインフルエンザにかかってしまったときの症状をやわらげる効果も期待されています。

30~59歳の健康な人を対象に、プラズマ乳酸菌が含まれるヨーグルトを食べる場合と食べない場合で、かぜ症候群やインフルエンザで起こる咳や熱っぽさ、のどの痛みなどの自覚症状が変わるかを調べました[2]。

具体的には、かぜ症候群やインフルエンザが流行する1月中旬~3月下旬までの10週間、プラズマ乳酸菌ヨーグルトを食べてもらった107人(プラズマ乳酸菌群)と、プラズマ乳酸菌が入っていないヨーグルトを食べてもらった106人(プラセボ群)に対して、かぜ症候群・インフルエンザと診断されたかどうかと、自覚症状の有無と重症度を尋ね、血液検査も行いました。この研究の参加者は、自分の食べているヨーグルトにプラズマ乳酸菌が入っているかどうかは知りません。

この結果、10週間の試験期間内に、かぜ症候群・インフルエンザと診断された人はプラズマ乳酸菌群で7人、プラセボ群で14人であり、プラズマ乳酸菌群で低い傾向がみられました。また、プラズマ乳酸菌群では、咳と熱っぽさの重症度が軽減されたり、のどの痛み(中等度以上)の発症が抑えられたりしていたことも分かりました。

さらに、血液検査によりインフルエンザウイルスに対する応答性を評価したところ、プラズマ乳酸菌は免疫細胞にIFN-αや抗ウイルス遺伝子(Isg15)を発現させることで、ウイルスに対する抵抗性を高めていることが示唆されました。

したがって、プラズマ乳酸菌はpDCの活性化を通じてウイルスに対する抵抗性を高めることで、かぜ症候群やインフルエンザにかかってしまったとしても、その症状をやわらげる可能性があることが示されました。

ロタウイルス感染症の症状の緩和

プラズマ乳酸菌は「おなかの風邪」の一種であるロタウイルス感染症の症状(下痢)もやわらげる可能性が示されています。

これは実験動物(マウス)を用いた研究です[3]。プラズマ乳酸菌を飲ませる群(8匹)と、生理食塩水を飲ませる群(8匹)を設定し、飲用2日後にロタウイルスに感染させ、その8日後まで観察しました。そうすると、生理食塩水を飲ませた群と比較して、プラズマ乳酸菌を飲ませた群では、下痢症状やそれによる体重減少が軽く、糞中ウイルス量も少ないという結果となりました。

これは動物実験の結果なので、そのまま人間に当てはめることはできませんが、プラズマ乳酸菌はロタウイルス感染症にかかったときにその症状をやわらげてくれるかもしれません。

プラズマ乳酸菌と他の乳酸菌との違い

ここまで、プラズマ乳酸菌によるかぜ症候群、インフルエンザ、ロタウイルス感染症への抑制効果をみてきました。実はこのプラズマ乳酸菌の効果は、他の一般的に売られている機能性乳酸菌にはない特別なものなのです。プラズマ乳酸菌はウイルス感染防御の要であるpDCへ働きかける特殊な乳酸菌で、ウイルスと戦うさまざまな免疫細胞を活性化することができると考えられています。その理由を詳しく説明します。

プラズマ乳酸菌はウイルス対策のために選ばれた

一般的な機能性乳酸菌でも、ナチュラルキラー(NK)細胞を活性化させて、ある程度のウイルス防御能を発揮することができます。しかし、NK細胞以外の免疫細胞を動員することはできないため、その効果は限定的でした。もっとウイルス防御能を高めるためにはpDCを活性化することが必要ですが、一般的な機能性乳酸菌ではpDCを活性化させることはできないと考えられていました。

そこで研究者が31菌種125株の乳酸菌を網羅的に調べたところ、ごく少数ながらpDC活性を示す菌を見つけることができました。そのうち最も安定的にpDCを活性化する菌が「Lactococcus lactis JCM 5805」、すなわちプラズマ乳酸菌でした。

このプラズマ乳酸菌の特徴を調べたところ、pDCに食べられると、ウイルスに対する攻撃を指示する物質(サイトカイン;IFN-α、IFN-β、IFN-λ)を作らせるように働くことが分かりました。LGG乳酸菌(Lactobacillus rhamnosus ATCC53103)と比較してみると、プラズマ乳酸菌はpDCに食べられて内部に取り込まれていましたが、LGG乳酸菌は食べられておらず、pDCの周りにくっついているだけで、ウイルスを攻撃するためのサイトカインを出すことはありませんでした[4]。

このように、プラズマ乳酸菌はpDCを活性化し、総合的なウイルス感染防御機構に作用する効果を発揮する特殊な乳酸菌なのです。

プラズマ乳酸菌がもたらすウイルス防御作用

先ほど、一般的な機能性乳酸菌でもNK細胞を活性化させる作用が見込めるという話をしました。一方、プラズマ乳酸菌がもたらすウイルス防御作用は、NK細胞だけではなく多様な細胞を動員します。

<プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)>
プラズマ乳酸菌を取り込んだpDCは活性化され、IFN-αなどの抗ウイルス活性をもつサイトカインを大量に産生・放出します。このIFN-αがあると、周りにいる普通の体細胞はウイルスを分解する物質(RNaseなど)を作り出し、ウイルスを撃退します。
<ナチュラルキラー(NK)細胞>
IFN-αはNK細胞を活性化させる因子でもあります。NK細胞はウイルスに感染してしまい、ウイルスの増殖に使われてしまっている細胞を認識し、殺す役割を担っています。ウイルスの増殖を食い止め、それ以上被害が広がらないようにします。
<キラーT細胞>
活性化したpDCはウイルスを見つけるとそれを取り込み、ウイルスの破片の一部を「印」としてキラーT細胞に見せます。そうすると、キラーT細胞はこの印が出ているウイルス感染細胞を探し出し、殺すことでウイルスの増殖や拡散を抑える働きをします。
<B細胞>
B細胞は抗体という飛び道具を作り出す性質を持っています。活性化したpDCからウイルスの印を教えてもらったB細胞は、そのウイルスを捕らえるための抗体を作り出し、大量に放出します。この抗体はウイルスにくっついて絡め取ることで、ウイルスの感染能力を奪います。

このように、プラズマ乳酸菌はウイルス感染防御に働くさまざまな種類の免疫細胞により、多様な方法でウイルスを撃退すると考えられています。

加熱処理をしてもプラズマ乳酸菌は働く

巷によくある乳酸菌の製品は、生きた乳酸菌を摂取して腸内環境を整えること(プロバイオティクス)を目指しています。この場合は、腸に届いた乳酸菌が定着して有機酸などを産生することが重要なので、生きたまま腸に届かないと効果が弱まる可能性があります。

一方、プラズマ乳酸菌は、菌体そのものが免疫を活性化すること(バイオジェニクス)でウイルス防御能を高めるため、菌が生きていなくても効果は変わらないと考えられます。生きていなくてもいいということは、熱で加工しても問題ないということです。さまざまな食品に添加することができ、安全性と利便性の面でメリットがあります。実際に、プラズマ乳酸菌を含んだ食品はいろいろな種類が出ています。

プラズマ乳酸菌が含まれる商品

ヨーグルト

乳酸菌と言えば、ヨーグルトを想起する方が多いと思います。プラズマ乳酸菌を含んだヨーグルトも販売されており、食べるタイプと飲むタイプがあります。医薬品ではないので、いつ、どのくらい食べるといいのかというのははっきり言えませんが、前述したインフルエンザ予防の研究では週に3回食べていましたので、これが一つの目安になると思います。

ソフトドリンク

プラズマ乳酸菌を含んだソフトドリンクも販売されています。乾燥しがちな季節には水分補給として取り入れると良いでしょう。

サプリメント

プラズマ乳酸菌は加熱処理ができるので、さまざまな形態に加工することができます。プラズマ乳酸菌を錠剤の形にしたサプリメントは、1日4粒(商品によっては1日2粒)を目安に摂取できます。ヨーグルトが苦手な方、より手軽にプラズマ乳酸菌を摂りたい方には良いかもしれません。

お菓子

乳酸菌の商品としては珍しく、ポテトチップスでプラズマ乳酸菌を摂取できる商品があります。ただし、体に良いからといって食べ過ぎるとカロリーオーバーとか脂質の取り過ぎが懸念されますので、食べすぎにはご注意を。

まとめ

ここまで、プラズマ乳酸菌を摂ることで期待されるウイルス防御能について、研究結果をもとに解説してきました。プラズマ乳酸菌はウイルス防御に着目して選ばれた特別な乳酸菌であり、pDCを介してウイルス防御にかかわる多種の免疫細胞を活性化することで、かぜ症候群やインフルエンザの発症予防や症状緩和に有効と考えられます。この作用は一般的な乳酸菌にはありません。

寒くなってくると、かぜ症候群やインフルエンザなどのウイルス感染症が増えてきます。体調管理や感染予防の一環として、日頃からの手洗い、うがいなどに加え、プラズマ乳酸菌が配合された食品を活用してみてはいかがでしょうか。

参考文献

  1. [1]Sakata K,et al:Health,9:756-762,2017
  2. [2]Sugimura T,et al:Br J Nutr,114:727-733,2015
  3. [3]城内健太,ほか:日本農芸化学会2014年度大会講演
  4. [4]藤原大介,他:化学と生物,53:626-632,2015

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